正月に遺品整理を依頼する理由

メモリーズでは年末年始は電話対応は行いますが、現場に出たり、会社に出勤する事はありません。日頃頑張っているスタッフを、この時期だけは休ませてあげたいと思っているからです。但し、『緊急性』がある場合は例外として、日時を問わず動きます。そう、それがお正月であっても例外ではありません。ちなみに緊急性のある案件とは、事件や事故、孤独死などで異臭や害虫が発生して近隣トラブルに発展してしまった場合です。
この仕事を始めた頃、休みの時でもかかってくるご依頼主様の対応に悩みました。 家族と楽しく過ごしている時でも電話が入ります。 孤独死されて動揺されているご家族様からの電話に対応する頭のスイッチの切り替えは、本当に難しかったです。今ではどんな状況でも、電話が鳴っている間に、心を整える事ができるようになりました。

そして今回…正月気分真っ只中の1月2日の朝に電話が鳴りました。「主人が年末に亡くなり、早めに片付けたいのですが、すぐに対応できますか？」「もちろん出来ますが…緊急事態ですか？」と尋ね、詳細な状況を伺うと、部屋で亡くなったのではなく病院でお亡くなりになっているので、特殊清掃の必要はなく遺品整理のみであることでした。「それでしたら、5日に伺いますが…」とお答えしましたが「できれば今日にでもお願いしたいのですが…」とのこと…何か事情がありそうです。
さらに詳しい状況を聞くと、ご主人様が使用していたお布団や衣類などの少量の遺品整理であることと、場所が大阪府内だったので、社員を呼ばずに私一人で対応出来るので、お受けする事にしました。

マンションの部屋に行くと、ワンちゃんとご依頼主であるお若い奥様が出迎えてくれました。遺品はすでに奥様が、ほぼ搬出できる状態まで整理してくれていたので、非常にスムーズに作業できました。作業が終わると奥様と一緒にコーヒーをごちそうになりました。普段は来客があると吠えまくるらしいワンちゃんも、すっかり私になついてくれました。
祭壇にある遺影を見ると、まだお若いご主人様でした。少し遺品整理をしたとは言え、想い出は部屋中にたくさんあります。一緒に過ごした部屋を整理できずに、手がつけられない方もたくさん見てきました。亡くなってすぐに整理するのは、勇気がいる事だと思います。「ずっと遺品を置いておくほど、私は気丈じゃないの…」と奥様は仰いました。お正月の間に、どうしても遺品整理をしたかった理由は、新年を迎えても遺品を見るたびに気持ちが戻ってしまって前を向いていけないから…悲しみを乗り越えるためだと私は悟りました。
遺品整理は物を整理するだけではなく、ご遺族様の思いを汲み取ることができる感性が大事だと改めて感じました。マンションの公園で子供達が大声ではしゃいでいました。 早く帰って私も子供と遊ぼうと、はやる気持ちを抑えて帰途につきました。