特殊清掃の依頼主は10代の女性

今回は、特殊清掃の見積りをした時のお話です。大阪の繁華街の近くにあるマンションが現場です。40代の男性が孤独死され、死後1ヶ月経過で発見されたとのことで、メモリーズに特殊清掃の見積り依頼がきまました。現場で待ち合わせをしていると、女性4人が来られました。皆さんご親族でしたが、ご依頼主として紹介されたのは一番若い10代の女性…故人の娘様です。ショックが大きかったのか、うつむいて何も喋りません。
ここからは推測ですが…ご依頼主がこの若い娘様ということは、母親（故人の奥様）は何らかの理由でおられないということ。そして、故人の第一親近者…つまり、孤独死案件で警察が司法解剖しているので、遺体の本人確認もこの娘様がされていると考えられます…。死後2週間以上経つと、顔は原形をとどめていません。今回は死後1ヶ月経過しています…お父様の変わり果てた姿に愕然とされたのでしょう。もちろん、それ以外の理由もあると思いますが…。

このような時、ご依頼者によっては、私と会話することで気が紛れて楽になったりする方もいます。しかし今回は、あまり色々とお話を聞くことはしません。今にも泣きそうな娘様の顔を見ていると胸が詰まります。マンションの中に入ろうとする私に「玄関まで行きます…」と重い口を開きました。エレベーターに乗った時点で死臭が漂っていました。これは絶対にクレームになっていると感じました。エレベーターが開き、娘様が鍵を私に差し出しました。「私はここまでしか…ここまででいいですか？」娘様は泣いておられました。当然、『その瞬間』を迎えてしまったお家へは足は進みません。頬を伝う涙に「何とかしてあげたい」と心から思いました。「無理しないでくださいね。大丈夫ですよ」と微笑みかけました。娘様をエレベーターに乗せ見送り、いざ入室。

臭いがなければ、普通に生活している部屋に入ってきたような感じです。食べかけの物や、ジュースなどが食卓にありました。部屋には洗濯物も干されています。しかし…ベットにはどす黒い形がくっきり跡になっていました。私でも「うっ！」っと眉にしわができるぐらい強烈な臭いです。なぜここまで気づかないのか・・ きっと女性も発見が遅れた事に、罪悪感を感じているに違いないと思います。明日、このお部屋の特殊清掃を行います。娘様が元の生活に戻れるように、肩の荷が少し楽になるように、心を込めて作業させて頂きます。