警察官も撃沈する悪臭の現場

大阪市内のワンルームで孤独死がありました。管理会社の方が「あまりにも強烈な臭いで何もできない！」と助けを求めていました。管理会社の方より鍵を預かり、見積りするべく、すぐに現場に向かいます。現場の住宅には階段しかなく、5階の一番奥の部屋と聞き、階段を上っていきます。5階に上がると既に臭いは到達していて、部屋まで20メートルぐらいあるのに強烈な臭いを放っています。「5階の住民の方は気の毒だな…」と思いながら部屋に向かいます。

長い廊下を進んで行くと、途中で真ん中ぐらいの部屋の扉が「ガチャ」と開き、中から男性が一人出てきました。軽く会釈をする私を見て「どこいくん？」と聞いてきます。よく見るとその男性は、メチャクチャ怖い風貌のいかついおじさんでした。「ちょっと…」と通り過ぎて現場の部屋に向かおうとすると「ひょっとして、部屋片付けてくれるんか？」と聞かれました。「そのつもりです…」と答えると、大柄な怖いおじさんが「兄ちゃん頼むわ～、飯も食えんがな！助けて～や、はよやってぇーな」とすがって来ました。

玄関の前に立つと「扉」があるとは思えないぐらい、特殊清掃現場特有の強烈な悪臭が漂います。鍵を開けようとすると「兄ちゃん気ぃつけや…警察もゲロってたぞ！ははは」との声…応援しているのか、驚かしているのか分かりませんが、確かにドアを開けると、あまりにも激臭が酷く、粘膜が刺激されて目が開きませんでした。
臭いがあまりにも酷く、見積書をチェックするどころか、家の中を見渡して記憶し、 外で深呼吸しながら見積書を作成するしかありませんでした。怖いおじさんから「兄ちゃんすごいな！さすがプロや」と賞賛の言葉を頂きました。いつまでここにいるんだろう…とも思いましたが、風貌が風貌なだけに、誉められて妙に嬉しかったです。

その後、正式に受注を頂き、すぐに作業開始。部屋を見違えるほどきれいに清掃させて頂き、強烈な臭いも完全になくなりました。最後は管理会社の方と付近の住民の方にすごく感謝されました。あの怖いおじさんとは再会しませんでしたが、きっと今頃は美味しくご飯を食べれていると思います…。