遺品整理をしたがらない遺族

お付き合いのある葬儀社様の紹介で、孤独死をされた現場に特殊清掃の見積に行くことになりました…が、ご遺族様は来ないとの事でした。「委任状は必ず貰ってくださいね」と葬儀担当の方にお願いし、大家さんと葬儀担当の方が同行して見積もりを行いました。
現場は死後2週間ぐらい経過しており、フローリングに人型の痕が残っています。「こんなん全部きれいにして、臭い取ってくれるんやろな！」大家さんは明らかに不機嫌な様子です。「ご遺族様が見積を承諾して頂ければ、現状復帰できます」私は答えました。

その後、ご遺族である故人の甥御様のお宅に、現場の状況やサービスの説明に伺いました。お話を伺うとかなり疎遠で、15年ほど会ってなかったと仰ってました。「なんで叔父のために、俺が金を出さなあかんねん」と、あきらかに遺品整理を行う事に不快感を持っておられます。私は現場に仏壇があったことを説明し、供養だけはされたほうが良いのではと提案をしたところ、少し納得して頂けはしましたが…「この金額しか出せん！」と、10万円を机に置かれました。
ここで私が断れば、必ず双方でトラブルになると直感しました。1DKのすべての家財道具と特殊清掃（消毒・害虫駆除・消臭）で10万というのは破格でしたが、大家さんもご遺族様も、そして紹介して頂いた葬儀社様も「納得」できる形が整ったので、このタイミングを逃してはいけないと思い、その金額で引き受けることにしました。

翌日、特殊清掃から取り掛かり、消毒、害虫駆除、消臭と順調に作業は進んで行き、最後に遺品整理をして、3時間ほどですべての作業が完了しました。現場を確認した大家さんも葬儀社様も大変喜んで下さり、さらにご遺族様に報告すると「ありがとう…助かりました」と言って頂きました。この結果に、携わったすべての皆さんが喜んでくれたので、私も嬉しいです。そして何よりも、亡くなった故人様が一番喜んでくれたかもしれません。